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[引退]2023.5.23

多田悦子が引退を表明

多田悦子(真正)が現役引退
 元女子世界ミニマム級3団体王者の多田悦子(41=真正)が、19日にSNSで引退を発表した。豊富なアマチュアキャリアを経て、2008年5月にデビューすると、5戦目でWBA女子世界ミニマム級王座を獲得。このタイトルは、9度防衛した。2013年7月に王座を陥落後も闘志は衰えず、IBF王座、WBO王座に就いた。

 2021年10月、韓国で判定負けした試合がラストファイトとなった。電話取材に応じた多田は、これまでの思いを熱く語った。
「今は清々しい気持ち」
 「前戦、韓国で負けたが、負けたとは思えなかった。あの感触が嫌だったので、再びあそこにたどり着くためにはビジョンを立て直さないといけない、そう考えたけれど、明確なビジョンが見えないままだったので、この状態でもう一度、キツい練習をするのは無理だなと思った。今年の1月23日にパーソナルトレーニングをして、ハッキリと無理だなと。このままでは、トップにおられへんと。そしたら『やりきったわ』と思った。このまま続けたら中途半端になる。後悔はない」とグローブを吊るした気持ちを明かした。
生涯戦績:27戦20勝(7KO)4敗3分
 「最初の10年間は、女子ボクシングを盛り上げるために必死だった。強い相手と戦う。本物志向でいきたくて、日本だけでなく、海外で戦うファイターがたくさん出てきてくれたらいいなと思いながら、自分が引っ張っていこうとやってきた。(キャリア)後半は自分の好きなことをしようとしてきた。がむしゃらだった」と、15年間に及んだ自身のプロキャリアを振り返った。
宮尾綾香(ワタナベ→引退)第2戦
 「本当に魂で戦った試合」と、2010年4月にカリブ海に位置するトリニダード・トバコで行われたリア・ラムナリン(トリニダード・トバコ)とのWBA世界ミニマム級王座3度目の防衛戦を思い出の一戦に挙げた。「冷房がない40℃の控室で、勝ったら殺されるような雰囲気の中で戦った。これまでの当たり前を覆された。引き分けだったが、(敵地なので)勝ちとちゃいますか」。

 さらに、2020年12月の宮尾綾香(ワタナベ→引退)との第2戦目も挙げた。「KOしたパンチはずっと練習していた。軽量級であのような倒し方は、なかなかないのではないか。『ボクシングは芸術』を体現した理想的な試合だった」。
「いろいろなことにチャレンジしていく」
 今後は、プロデュースしているフィジカルトレーニングジム「LOVE WIN」で指導したり、様々なことにチャレンジしていく。

 「自分は、体の使い方を覚えたら、どれだけ強くなれるかをよく知っているが、最近はフィットネスからスパーリングをやりたいという会員も増えてきている」。
おつかれさまでした
 「正直なところ、しんどいことの方が多かったが、振り返ればトレーニングに対して嘘をつかずやってきて、こんなところまでくるとは(正直)思わなかった。ボクシングをやって良かった。こんなにすがすがしい気持ちで引退できるなんて幸せ。試合を組んでくれた山下正人会長や、ボクシングに集中できる環境を作ってくれた方々、応援してくれたファンには感謝しかない」と改めて、自分のボクシング人生を支えてくれた人々へ感謝の言葉で締めくくった。

ボクシングをやって良かった

 現役時代の多田は親しみやすくて、会場で会うと、いつも「まいど!」と気軽に声をかけてくれた。

 ボクシングに対しては芯がブレず、強さに常に貪欲で、他の選手の取材でジムに行った際は、しばらくこちらに気がつかないほど、一心不乱に汗を流していたのが印象的だった。本当に熱い選手だった。3団体を制覇したレジェンドボクサーは完全燃焼した。