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[海外ニュース]2017.4.4

村田が挑むエンダム

アッサン・エンダム(仏)

 12年ロンドン五輪金メダリストの村田諒太(31=帝拳)が5月20日、東京・有明コロシアムで拳を交えることになったWBA(世界ボクシング協会)ミドル級暫定王者アッサン・エンダム(33=カメルーン/仏)は、2度の五輪出場のほかプロでも3度の戴冠実績を持つなど輝かしい経歴の持ち主だ。はたして村田はこの壁を乗り越えて世界王座を獲得することができるのか。
※これまでハッサン・ヌダム・ヌジカムと表記してきましたが、主催者発表に合わせて「アッサン・エンダム」とします。

 エンダムは中央アフリカに位置するカメルーンの首都ヤウンデの出身で、アマチュア時代にはアフリカのジュニア王者になったほか世界ジュニア選手権8強、さらに04年アテネ五輪にも出場するなどトップとして活躍した。アテネ五輪では準々決勝でガイダルベク・ガイダルべコフ(露)にポイント負けを喫したが、このガイダルべコフは決勝でカザフスタン代表のゲンナディ・ゴロフキン(現WBA、WBC、IBF王者)に勝って金メダルを獲得している。また、エンダムはプロ選手の参加が解禁となった昨年のリオデジャネイロ五輪にも出場したが、そのときはライトヘビー級初戦敗退となっている。アマチュア戦績は84戦77勝4敗3分と伝えられる。

 プロデビューは04年12月で、いきなり24連勝(17KO)をマーク。余勢を駆って10年10月にはアフタンディル・クルツィゼ(ジョージア/米)に判定勝ちを収めてWBAミドル級暫定王座についた。12年5月にはWBO(世界ボクシング機構)の暫定王座を獲得し、のちに正王者に昇格。ちょうど村田が五輪で金メダルを獲得したころのことである。しかし、初防衛戦でピーター・クィリン(米)に12回判定負けを喫してベルトを手放した。この試合では計6度のダウンを喫したエンダムだが、その都度立ち上がって反撃、粘り強さをみせつけた。その後、フルヘンシオ・スニガ(コロンビア)、カーチス・スティーブンス(米)といった世界挑戦経験者を下してトップ戦線に踏みとどまり、15年6月にはIBF(国際ボクシング連盟)の王座決定戦に出場。この試合でもエンダムはデビッド・レミュー(カナダ)の強打を浴びて4度もキャンバスに落下したが、すべて10カウント内に立ち上がった。判定負けは喫したものの最終回にはレミューをふらつかせるなどスタミナと地力のあるところをみせた。再起3連勝後の昨年12月、アルフォンソ・ブランコ(ベネズエラ)のWBA暫定王座に挑戦。エンダムはスナップの効いた右を相手のアゴに叩き込み、開始からわずか22秒でKO勝ちを収めた。これが最新試合だ。プロ戦績は37戦35勝(21KO)2敗。

 身長180センチ、リーチ193センチのエンダムはミドル級では平均的な体格といえる。先のブランコ戦だけから想像すると好戦的な強打者というイメージが浮かびそうだが、実際は足をつかいながら左ジャブを多用して距離を保った戦いを得意とするボクサー型だ。特に左ジャブは数も多くスピードもあるだけに、相手にとっては厄介なパンチといえそうだ。ブランコを一撃で失神させたように、もちろんパンチ力もある。右ストレートだけでなくインサイドから突き上げる右アッパーや左フックにも注意が必要だ。無駄な動きも含めて全体的な運動量は多く、それでいて12ラウンドをフルに6度も戦いきっているのだから、そのスタミナには驚かされる。エンダムの映像をチェックした村田は「ガードの上から弾き飛ばされるようなパンチではないと思うが、長い距離で戦わせたら強いのでミドル、ショートの距離で戦いたい。ポイントを取るのがうまいのでリズムに乗せないことが大事」と話している。反面、クィリン戦で6度、レミュー戦で4度のダウンを喫しているように決して打たれ強い方ではないが、決定打を許さない粘り、クリンチの巧さも付記しておく必要があるだろう。

 このエンダムは、村田が並行してターゲットにしていたWBO王者のビリー・ジョー・サンダース(英)よりもむしろ厄介なタイプといっていいだろう。村田にとってはリスクも跳ね上がるが、その分、戦い甲斐もある相手といえる。村田は「危険な相手なので間違いなくタフな試合になる。でも、この選手に勝ったら自分が強いと胸を張っていえる」と意気込んでいる。エンダムは乗り越えるだけの価値のある壁といえる。