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[試合後会見]2015.4.5

上手い木村から強い木村へ

木村の右がめりこむ
 日本ライトフライ級王者の木村悠(31=帝拳)が、2週間前に急遽変更となった同級5位の山口隼人(25=TEAM10COUNT)を迎え、4日の後楽園ホールで3度目の防衛戦に臨んだ。世界を目指す上で「上手さから強さへ」をテーマに掲げた木村は、ステップアップをはたすことができたのか――。
採点表
 両者の応援が入り乱れ始まった試合は、序盤から王者・木村の右ストレートが冴え渡り、ガードを固め積極的に仕掛けた山口の打ち終わりにワンツー、左フックを浴びせた。挑戦者を懐に入らせないボディワークはもとより、パンチのスピード、キレで差をつけた王者は、5回の途中採点を3者とも49対46で折り返すと、6回にはヒッティングで山口の左目上を裂いた。山口も果敢に踏み込んでは起死回生の一発を狙ったが、木村のペースを崩すことができず、中間距離では左一本で捌かれる場面もあった。7回終了間際の連打を何とか乗り切った山口だが、続く8回終盤に再びパンチをまとめられると、傷口の悪化もありここでレフェリーが割って入った。
勝利者インタビュー
 500人もの大応援団の期待に見事応えた木村は、珍しくコーナーポストに駆け登ると勝利の雄叫びを上げ、ファンと喜びを共有。勝利者インタビューでは「次の試合がアマ・プロ合わせて100戦目(アマチュア80戦、プロ19戦)。そこで世界が獲れたら最高です。もっと上に行って皆を喜ばせたい」と声を弾ませた。
今後の歩みに期待するよ。頑張れ!
 敗れた山口は控室に戻ると、人目もはばからず号泣。落ち着いてからの会見となった。「モーションのないワンツーが見えなかった。上手く時間を使われ、何もさせてもらえなかった」と素直に完敗を認め、相打ちの右ストレートは当たったがその後が続かなかったと悔やんだ。
 試合2週間前のオファーにより、10kgの減量に加えてスパーリングは1回のみ。決してベストコンディションとはいえない状態だった。それでも「次はベストで挑戦したい。この悔しさを糧にして必ずチャンピオンになります」と精一杯に前を向いた山口に、同席した鳥海純会長は「挑戦者としてやれることはやった。急なオファーにも即答して挑戦を受けた。男だよ、彼は」と愛弟子を労った。
 3年半ぶり、2度目のタイトル挑戦も実らなかった山口だが、2週間前にも関わらず多くの応援団の後押しで最後まで挑戦者らしく戦った。再起して3度目の挑戦に挑む姿に期待したい。
一歩前進
 一方、大応援団の祝福から抜け出し控え室に戻った木村。「強いチャンピオンを見せたかったので、結果が出せて良かった」と会心の勝利を改めて喜び、細かく言ったらキリがないと前置きしつつも「今日は右がよく決まり、自分でチャンスを作ることができた。これまでやりづらいと感じ、気持ちの中で避けていた山口選手にストップ勝ちすることができて自信になった」と誇らしげな顔も見せ、自身に合格点を付けた。
目指すは世界
 「まだ月間賞をもらったことがないので、今回の内容なら新鋭賞ぐらいはもらえますかね?」とおどけてみせた木村は、ライバルの田口良一(ワタナベ)が一足先に世界(WBA同級王座)を掴んだことで、世界への意欲が一段と高まったと話した。そして「強さ」をテーマの掲げた今回、特に上半身のフィジカルトレーニングを積み、肉体の変化とともにパワーアップの手応えも感じることができた。すでに世界トップレベルの技術力にパワーが加わった今、木村は世界への課題として「世界を獲るという断固たる決意」の重要性を挙げた。アマ・プロを通じての100戦目で、いよいよ木村の世界挑戦が決まるのか――、今後に注目したい。