[特集]インタビュー
2008.5.7

JBC安河内事務局長.2


 現在、JBCではレフェリー・ジャッジの育成とレベル向上に力を入れている。ボクシングの試合に於いてボクサーと共にリングに上がり、試合を裁く裏方の主役がレフェリーであり、ラウンド毎の選手の優劣を点数化するのがジャッジである。前回に続き、安河内事務局長にレフェリー・ジャッジの現状を語ってもらった。

レフェリング編
□前回、若手スタッフを研修の一環としてプロテストでレフェリングしていくと伺いましたが?
安河内「全国的にレベルを上げて行かなくてはと考えています。試合役員会もDVD作成、模範となる動き、反則のとり方、ジェスチャーの統一等、本腰を入れて底上げに取り組んでいます。東京以外、地方で興行がある時などは時間の許す限り浦谷審判部長などベテランのレフェリーに行ってもらい、レフェリングを行って地方の若手レフェリー達に勉強してもらう。東京と地方のレフェリング・ジャッジの交流を頻繁に行ってます。ただ、地方は日曜に試合が多く、東京は平日に試合が多いので、東京でのレフェリー・ジャッジのなり手が非常に少ないのが現状です。東京の興行は平均で月に12~13回、ほとんどが平日の開催です。レフェリー・ジャッジは普段正業を持っている人間が行っているので、平日の夕方5時位に抜け出せる人は少ないんです。関西は逆に土日に集中するので、レフェリー・ジャッジもなり手がいるんですが。人材確保も悩みの種です」

□JBCとして人材確保の動きは?
安河内「JBCとして募集を行っています。このインタビューをご覧になった方で、レフェリー・ジャッジに興味関心を持って頂けたならばJBCまでご連絡下さい。随時受付けています。あと、女子の興行もスタートします。レフェリー・ジャッジ・進行を含めて女子ボクシングのお手伝いを頂ける方を募集しています。女子には女性の試合役員が望ましいと思いますが、こちらも男女問わず募集をしていますので宜しくお願いします」

□レフェリングについてですが、最近の試合においてストップするタイミングの不透明感、試合を止めるタイミングと観客、セコンドと首を傾げるタイミングでのストップが多い様に感じますが。
安河内「良い質問です。常に私達もその部分と戦っている所があります。ただ大前提として、JBCからレフェリーの皆さんにお願いしているのはストップする際、止める以前、そこまでの試合展開を考えないで欲しい。どんなに一方的なリードであっても危険な時は止めて欲しい。残り時間が1秒、2秒だろうが最終ラウンドであろうが、危ない時には止めて欲しい。レフェリーの方には自分が危ないと思ったらタイミングが多少ずれても躊躇無く止めて欲しいと話しています。レフェリーもプロですから、止め方ですとか日々苦心していると思います。健康管理とのバランスの中でストップのタイミングは永遠のテーマです。ただ我々もプロですからお客様に納得して頂かないといけないし、そこをどう言う風に考えて実践して行くか。JBCではストップするタイミングやバラつきと言った部分を皆で検討する機会を持ってやっています。ディスカッションはもちろんそれぞれの反省、勉強も必要です。ただやはり一番近くにいるレフェリーが危ないと感じたなら迷わず止める。それが大原則です」

 試合のストップについては、先日こんな試合があった。Sライト級6回戦で行われた迫田大治(横田S)と張飛(明石)の一戦で、1回にダウンを奪った張が最終ラウンド終盤に迫田から連打を浴び、レフェリー福地勇治は終了2秒前に試合をストップした。ダウンこそ無かったものの、終盤劣勢だった張と初回にダウンを奪われた迫田の判定は恐らく微妙だっただろう。見ていた観客、張のセコンドからはなぜ止めたのかと疑問の声が出ていた。張はレフェリーの腕から離れ、マットにしゃがみ込み呻いている。最初はストップを掛けられた悔しさで泣いているのかと思ったがどうも違う。次第に張の呼吸が荒くなり、試合役員の用意した担架で運ばれる事態となった。近くの病院で緊急開頭手術を受けた張の診断は、急性硬膜下血腫とされた。
 競技内での事故率が高いとされるボクシングで、選手を最も近くで見守るレフェリーがストップ、試合を止めると宣言したのならば、正しい判断と認識するべきなのだろう。その為にもJBCにはより公平で一貫性のあるジャッジ・レフェリングが求められる。「残り時間が1秒、2秒だろうが最終ラウンドであろうが、一番近くにいるレフェリーが危ないと感じたなら迷わず止める」安河内事務局長の言葉を思いだした試合だった。

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