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[試合後会見]2014.3.12

下川原と沼田の激突!

 チャーリー太田(八王子中屋)が返上したOPBF東洋太平洋スーパーウェルター王座を懸け、11日の後楽園ホールで同級8位の下川原雄大(31=角海老宝石)と同級3位の沼田康司(29=トクホン真闘)が争った。
 同時期にデビューした両者は、今回が互いに節目の30戦目。実戦はないがこれまでに数多くのスパーをこなしてきた間柄だ。しかし、沼田は2階級制覇を目指す元日本ウェルター級王者。かたや今回がタイトル初挑戦の下川原。互いをリスペクトしあう仲であっても、戦いに一切の私情は見られなかった。戦前の予想も、長身とロングレンジの左を生かしたアウトスタイルの下川原、中・近距離で無類の怪腕ぶりを発揮する沼田と対照的な一戦とあって、五分の意見に別れた。
闘いを楽しむように
 先手を取ったのはウェルター級から上げ、ようやくこの階級に体が追いついてきたと話す下川原。ジャブを突いてはサイドに動くを繰り返し、一発でも入ればすぐに流れが傾く沼田の右に対応した。スロースタートの沼田のペースも次第に上がり、4Rにはその危険な右を浴びた下川原だったが、「効いてない」と両手を上げアピール。すぐにジャブを返すと、今度は沼田がだらりと腕を下げ、「もっと打って来い」と挑発。両者の応援もそれに呼応するかのようにヒートアップしていった。
THE激闘
 4Rの途中採点を二者、2P差の2-0でリードした下川原は、中盤に入り幾度も危険なパンチを浴びるも、この日は鍛え上げられたフィジカルと精神力の強さでカバーし、すぐに自分のスタイルを取り戻した。沼田の堅いガードをワンツーで破ることは出来なかったが、接近戦では右アッパーが有効に入り、左ボディでスタミナを削った。沼田も追撃の手を緩めず、右クロスから強烈な左フックを何度も叩き込んだ。
 8Rが終わり、ジャッジは三者三様の1-1。一進一退の攻防はこの後も続き、勝敗は判定に委ねられた。一者が115-113で下川原を、一者は同じく115-113で沼田を支持。残る一者は114-114と読み上げられ、決定戦はまさかのドロー、王座は空位のままとなった。
沼田は引退を口に
 激闘を終え、先に控え室に戻った沼田が会見に応じた。「気分的には負けです。下川原さんに研究され丸め込まれました。もっと早く攻めておけばよかった」と試合を振り返り、「これまでにも何度か引退すると言ってきましたが、ちょうど30戦目で今年30歳になる。トクホンダッシュの興行も最後で節目だと思っています」と引退を口にした。それでも、ラストファイトがドローという結果には「バーンと倒されていたらスッキリしたんですけどね。妻や娘もいますから。一人だったら、直ぐに下川原さんに再戦をお願いに行ったでしょうね」と、笑顔で心境を明かした。
チームに感謝
 今後は、ボクシングの楽しさを小さい子達にも教えたいとも話した沼田。「試合はみんなでするものなんだと痛感しました。セコンドの指示がなかったら倒されてました」と、自身が夢中になったボクシングを語ると「第二の人生を始めないといけませんから」と、自問自答を繰り返した。スパーリングで何度も向き合い、奇しくも最後に拳を交えた下川原とのラストマッチに「勝っても負けても最後のつもりでやりました」と記者団に一礼し、会見を終えた。
必ずベルトをつかむ
 一方、左頬の下を大きく腫らし激闘の痕を残した下川原。「沼田の左右にもっと合わせられると思ったが、ジャブに対応ができなかった。(自分の)打ったあとの返しも遅かった。アッパーの手応えはあったが、あれで倒れなかったのは流石。神様がもうちょっと頑張れと言っているのかな」と反省するも、力を出し切ったその顔は意外にもスッキリとしていた。
 続けてフィジカル強化の手応えを掴んだと話し、「練習したことをもっと出せれば、次はベルトを巻けるはず」と自信を深めた。だが、記者から沼田の引退を聞くと「そうですか、辞めるならアイツの思いも背負うだけ。再戦をするなら、もう一度同じモチベーションを作りますよ」と答え、鈴木眞吾会長も「うちの興行でやってもいい。みんなもう一度見たいはずですよ」と、再戦を後押しした。
 沼田の引退が真意なのかは今の段階では分からないが、ここまで真剣に引退を口にしたのは初めてのこと。2人の決着は、永遠につかないままなのか――。

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