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[特集]2018.2.5

五輪ボクシングが「除外危機」の真相

 冬季五輪開幕を目前に控えた韓国・平昌から、4日、激震を走らせる警告があった。理事会後のIOC(国際五輪委員会)が、2020年東京五輪の実施競技から「ボクシングを除外する可能性」を明らかにしたのだ。近代五輪のみならず、紀元前の古代五輪でも行われた伝統種目が、なぜ渦中に陥ったのか。そして再来年、両国国技館で予定されている五輪ボクシングの開催は、本当になくなるのか。実情からその可能性までを再確認したい。
スポンサーの指示で行われていたアフリカ開拓
 昨年からIOCは、五輪ボクシングを統括するAIBA(国際ボクシング協会)に「いくつかの問題を解決しなければ、分配金を含むすべての支払い停止を決める」と報告書の提出を求めていた。特に厄介な問題は「財務」だった。AIBAは米ドルで1000万の投資をアゼルバイジャン企業に行ったが、この会社が倒産することで破綻危機に。この際、当時会長を務めていた台湾人のウー・チンクオ氏は、アリ・スポーツやタイシャンといった中国大手企業とスポンサー契約を交わし、この問題が明るみになる前の解決を試みた。
 しかし契約は独断であった上に、財務問題も、先に解雇した韓国人のホー・キム元事務局長から暴かれ、ウー氏と常任理事の対立はむしろ明確なものになってしまった。以降、ウー氏と常任理事はサスペンド合戦を続けたが、最終的には11月にウー氏が辞職する形で落ち着いた。
かつてのウー氏、ファルシネリ氏、キム氏
 ウー氏に代わって暫定会長と務めたのは当初、イタリア人のフランコ・ファルシネリ氏だった。しかしファルシネリ氏は「家族の事情で」と先月末の臨時総会で、暫定会長をロシアとの二重国籍を持つウズベキスタン人のガフール・ラヒモフ氏に任せ、AIBAは中国企業とのスポンサー契約もすべて解いた。
 今回のボクシング除外警告は、主にラヒモフ新暫定会長に対する懸念といえる。ラヒモフ氏は中央アジア屈指の大物実業家である一方で、複数の犯罪組織との連携が指摘されており、2000年シドニー五輪では、マフィア・リストに入っていたことでオーストラリア入国を拒否され、アメリカでは今も金融制裁を受けている。対象的にウー氏は、IOCでは次期会長の有力候補とされるほど従順であったことを考えると、同組織からの不信感は高まって当然だろう。
表舞台に突如現れたガフール氏
 ただ、ガフール氏の指揮するAIBAは「財務」の問題に関して、アゼルバイジャン企業側と「法定外和解が成立した」と発表するなど、早くも結果を出している。また、今年11月にモスクワで行われるAIBA総会では、別の役員が正規の会長になる可能性も高く、IOCのリストアップした問題は、今年中にすべて解決できることも可能性もあるのだ。
 また、AIBAは、今月1日から4日にかけ、WBC(世界ボクシング評議会)、WBA(世界ボクシング協会)、IBF(国際ボクシング連盟)、WBO(世界ボクシング機構)と手を取り合い、ロシアのソチで第1回ボクシングフォーラムを開いた。式典では五輪3連覇の偉業を持つフェリックス・サボン氏(キューバ)が、ボクシング界全体の年間最優秀選手賞をゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)に授与。IOCとの関係悪化の一方で、永遠のテーマと思われたプロ・アマ問題には価値ある進展を示したのだ。
バッハIOC会長とウー前会長はいい関係だった
 除外警告を受けたAIBAは、公式ウェブサイトなどを通じて「改革に務めていた最中だったので非常に失望しているが、あやまちを繰り返さない決意をIOCに確信させたい」として、新財団計画などを発表した。いずれにせよ、この汚名返上は今年が正念場になりそうだ。最大のピンチを脱却し、2020年の東京では、夏休みの子供たちに夢を与え、拍手喝采の中で五輪ボクシングが終了することを祈りたい。
あの感動を次は日本で…

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