なんでもできるはず

　現在、WBA世界フライ級王者の井岡一翔(27)のタイトルを含め3本のベルトを有する名門井岡ジムから2010年にプロデビューを果たした岸上泰憲氏(33)は、13戦10勝(6KO)2敗1分の戦績を残して昨年8月、惜しまれつつ引退を表明した 。リングを降りた元A級ボクサーは昨年末、大阪市西区九条で焼肉「牛匠」をオープンして、第二の人生をスタートしていた。プロボクシング界の近代化が進む一方で、現役を退いた選手たちのセカンドキャリアはどうなっているのか。引退後のボクサーが頑張る姿を追った。

　練習の厳しさでも群を抜き、若いうちから注目される選手が多い井岡ジムにあって、27歳でプロデビューした岸上は異質な存在だった。それでも、天性の明るさと負けん気の強さでA級昇格を果たした。ただ「その先が厳しかった」とボクサーとしてのキャリアにピリオドを打った。
　グローブは吊るしても社会人としての現役生活は続くー。父親が肉の卸屋を営んでいることがきっかけで「焼肉の世界で一番を狙う」と一念発起し、2ヶ月の準備期間を経て店をオープンさせた。

　大阪市営地下鉄九条駅から歩いて5分、カウンターのみ7席の小さな焼肉屋。「15歳から飲食店でアルバイトしてたのでこれしか思い浮かばなかった」と高鳴る夢に向かって必死に準備しオープンにこぎつけた。「すべて父親のおかげです」と父親から極上の肉を仕入れ提供する。上質な肉を出すことで徐々に客層も広がりをみせる。
　少数精鋭でファンの心をおどらす選手をリングに送り込む「井岡ジムのイズム」を別のかたちで垣間見ることができた。

　セカンドキャリアについて今から引退し社会に飛び出すボクシングの後輩達には「とりあえずあれだけ厳しい練習してきてるんやし、ボクシングやってたらなんでも出来るでしょう。まずは踏み出すことが大事」とエールを送る。

■牛匠
〒550-0027
大阪府大阪市西区九条1丁目17-19
06-6585-2929
営業時間17時-24時
※日曜定休日