大毅は自分の未来を抱きしめた

　都内のヒューマントラストシネマ渋谷で26日、「ヒットマン　明日への銃声」監督・辻裕之(来年1月4日公開、下北沢トリウッド1月10日まで)の完成披露試写会がおこなわれ(ネタバレあり)、今作で映画初主演を果たしたIBF世界スーパーフライ級王者で渦中の人、亀田大毅(24=亀田)が王座に関して物議を醸した敗戦以降、初めて公の場に姿を現した。

　この日は、取材規制のため暗礁に乗り上がってるIBF世界王座に関する質問は、一切受け付けなかった。そのため、この件に関する発言はなかった。
　古希の誕生日を迎えた企画総指揮で原案も務めた俳優の岡崎二朗氏は、試合の日には、会場にもたびたび足を運ぶなど大毅の大ファンで、これまでにも親交があるため、この日の大毅は終始リラックスしていた。また、本作でも、重厚な存在感で大毅をささえている。

　 岡崎氏は「大毅の哀愁漂う優しい目に惚れ込んで、口説きにくどいた作品」と話すと「2階級制覇を狙う大毅の勝負の邪魔にならないようにと、ポツポツと9ヶ月あまりかけて撮影した」と撮影秘話を明かした。タイトルからは、任侠ドンパチものかと思いきや、男が泣けるものがたり。夏祭りや冬の景色を心象風景としておりこみ、児童養護施設を脱走しスリを生業に生き抜こうとする少年・圭介(五月馬)と浅草のテキ屋を侠商とするチンピラ梅宮東(亀田大毅)の兄弟のようにひかれあうふたりの絆を描いた人情物。
　現場に台本を持ち込まずきっちりと読みこんできたという大毅は、「自分が主人公・梅宮東に溶け込んでいくことができ、すごく良い映画になったと思う」と笑みもみせた。

　人情味あふれる親分(岡崎二朗)をヒットマンから身を呈して守ったことから起こる主人公・梅宮東の悲しくてやさしくて愛おしいヌーヴェルバーグ。
　西岡徳馬演じる画家・藤島のもとで保護される少年・圭介。会いたくて逢いたくて描く梅宮東のスケッチ。その絵に魂が宿ったとき奇跡が起こる。

　脇を固める役者陣は刑事役で渡嘉敷勝男、大家役でせんだみつお、組員役の伊丹幸男、劇中歌も歌い歌手役で中森あきない等、個性派が勢ぞろい。

　 ヒットマンとして少年・圭介と別れようと決心する車中の梅宮東。日差しに照らされた大毅の横顔は、まさに哀愁漂うまなざし。
　雪の中、紋付き袴で疾走する主人公。ラストシーン、成長した青年は汚れなき少年の魂をみごとに受け止めた。秀逸なストップモーションだった。