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WBA女子世界スーパーフライ級タイトルマッチ、王者の山口直子(35=白井・具志堅)対同級3位、前WBC女子世界ミニマム級王者の藤岡奈穂子(38=竹原&畑山)の10回戦は13日、東京・後楽園ホールで行われた。日本の女子ボクシング界屈指の好カードといわれる注目ファイト。山口の剛腕が唸りを上げたのか、それとも藤岡のスピードと技術が凌駕したのか。
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最初から最後まで両者ともKOを意識した戦いをみせ、会場を湧かせた。試合後、勝利を収めた藤岡はもちろんのこと、敗れた山口にも大きな拍手が送られた。
ダウンに呆然とする山口
内容的には藤岡の快勝といっても試合だった。スタートから先手をとって攻めた藤岡は3回、得意の左フックをきっかけに好機を広げ、ロープに山口を追い立てて右ストレートで値千金のダウンを奪った。その後も藤岡は巧みに位置どりをしながら出入りのボクシングで着々と加点。3度目の防衛を狙う山口も重量感のある右を振って意地を見せたが、後手にまわったうえ的を絞ることができず見栄えの悪い展開となった。藤岡のリードは誰の目にも明らかだったが、それでも勝負の興味が薄れなかったのは、最後まで両者がKOにこだわりを持って攻めたからだ。藤岡の左フックとワンツー、山口の右ストレート、左ボディブローが繰り出されるたび会場は揺れた。「ポイントを取ったから逃げようとは思いませんでした。リスクが高いことは分かっていたけれど、相手もそうでしたから」と、藤岡は打撃戦を続けた理由を語った。その心意気がファンの期待に応えるスリリングでエキサイティングな好試合を生んだといえる。
笑顔に溢れた試合後会見
2階級飛び越えて2階級制覇を果たした藤岡は、両目の下が薄青く変色。試合途中で左の鼓膜も破れたというが、会見は笑顔に溢れたものとなった。「山口さんはパンチャーで巧さもあるので警戒しました。(通用するかどうかは)やってみるまで分かりませんでした。初回、ジャブをもらったとき、これは(まともにパンチを)もらったらまずいなと思いました」と、序盤は不安だったことを明かした。3回に奪ったダウンについては「何が当たったんですかね?」と、問い返す場面もあった。そして「あのあと、もう1回ぐらいダウンをとれるかなと思ったんですが…」と、少々悔しそうな表情もみせた。
2階級制覇達成
38歳での2階級制覇は男女を通じた日本の年長記録となるが「あまり嬉しくないですね」と照れた。陣頭指揮をとった竹原慎二氏(元世界ミドル級王者)は「いい試合をして勝っているのだから価値があるよ」と藤岡を称えた。新しい階級でやっていけるかどうかについては「それは分かりません」と首を傾げた新王者に対し、同じくコーナーについた畑山隆則氏(元世界2階級制覇王者)は「結果を残したことは大きいよ」と、今後のスーパーフライ級での活動に太鼓判を押した。今回の試合の勝者はWBAから暫定王者との統一戦が義務づけられており、次戦は来春、アルゼンチンで行う可能性が高いという。戦績は11戦全勝(6KO)。
藤岡は勇気があった
一方、敗れた山口は両目の周辺に腫れをつくりながらも会見に応じた。「完敗です。先にパンチをもらうことが多く、リズムがつかめませんでした。振りの大きいパンチだったけれど、(藤岡に)勇気があったので押されました」と、素直に敗北を受け入れた。相手については「パワーもあり気持ちも強い選手」と賛辞を送った。気丈に会見に応じていた山口だが、「調子がよかっただけに残念。ただ、女子ボクシングとしてはいい試合だったと思います」と話し、そこで初めて涙をみせた。使命感を抱えての試合だったことがうかがえる。今後に関しては「まだ力を出し切れていない」と話したことから、現役続行とみてよさそうだ。具志堅用高会長も「チャンスはもう一度あるよ。藤岡と暫定王者の勝者と対戦させたい」と愛弟子のチャンスづくりに奔走することを約束していた。18戦15勝(13KO)3敗。