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これまで一度も日本人に負けていない井上が、スピードとテクニックで翻弄したのか? それとも34歳のベテラン王者・古橋の気迫が勝ったのか? アジア2冠王者に輝いたのはーー。
下がりながら左フックをカウンターで合わせる拓真に対して、古橋は前に出て距離を詰めてコンパクトに左右の手を出したが、2回、拓真は左アッパーを3連発。それでも古橋は下がらず拓真を追った。3回、接近戦で拓真は右アッパーを連打。5回終了時の公開採点は、3者ともにフルマーク50-45で拓真を支持した。中盤以降もロープまで下がりながら、ディフェンス力とスピードで実力差を見せる拓真だが、古橋に決定打を与えられず。
試合後のリング上、インタビューに応じた拓真は「自分のボクシングが出来ず、課題の残る試合になった」と試合を振り返り、「古橋さんのガッツあふれるスタイルに呑まれました」。そう言って、34歳のタフな古橋を称えた。
「体の大きさ、減量やっててもバンタム級が適正。父もそう思っている。世界が決まった時に一発で取れるように、いい収穫となった。こんなとこで、満足しててはいけない」と主戦場のバンタム級で世界を目指すこと、チャンスが来れば、一発で世界王座奪取するための準備は整ったことを伝えた。
2年半前に取り逃がしたWBCの緑のベルトは、ノニト・ドネア(比/米)が保持しているが、そのことに話が及ぶと「そこに行きつきたい」と気持ちを込めた。
試合後の取材に応じた古橋は「判定が出る前に、(勝ちは)向こうだなと思いました。やりたかったことは、全部潰された。向こうに上回られた。一回ボディが効いたが、ダメージはなかった。左から攻めたかったが、距離を潰されて崩された。フェイントを入れてる間に動かれたり、返されたり。余裕はなかった」と、淡々と試合を振り返り、「引き出しの多さ、実力の差を思い知らされた」と、ジャッジ2者がフルマークをつけた判定結果に納得した。
笠康次郎トレーナーは「ジャブ、リードの練習をしてきた。すぐに中に入れたが、拓真は短気なところがあるから、それを引き出せたらと思ったけど、古橋の性格の良さが出てしまった。強引に行くべきところもあった。負けるなら、このパターンだろうと思っていた。倒すなら古橋、と考えていたのだが」と、技巧派に空回りした試合を悔しがった。